ゴルファーは二つに大別される。
圧倒的な飛距離でロングドライブ。セカンドはウェッジのドラ・サンタイプ。
方や、緻密で機械のようなコントロール。確実にスコアメイクするマシーンタイプ。
今回紹介したいのは後者である。
精密機械のようなプレイスタイルを心情とする御仁は、クラチャン連覇を含め数多くのタイトルを総舐めにしてきたトップアスリートだ。
このコメントが初心者諸氏のスキルアップにも少なからず貢献できることを!
さらに、アスリートにとっても目から鱗の体験談であることを願っている。
-彼のことを人は「小ババ・ワトソン」と呼ぶ。-
飛んでも230ヤード。頑なな意志を感じる球筋。
おそらくババ・ワトソンには150ヤードも置いていかれる、似ても似つかない御仁。彼が小ババ・ワトソンと呼ばれる所以は飛距離ではなく球筋だ。
そんな唯我独尊のプレイスタイルで崇拝されるプロが日本にも一人居た。
「彼を連れて世界中で賭けゴルフをすれば億万長者になれるだろう。」
確か、ジャックニクラウスにそう言わしめたのは、故杉原輝男プロである。
プロとは思えないフォームとスィング、フェードボールで的を射抜く正確無比なコントロール。
勝負の鬼と呼ばれた杉原プロは精密機械のようなマシーンタイプのゴルフを心情としていた。
そんなプレイスタイルに酷似した小ババ・ワトソン。
ドライバーは230ヤード以上飛ばさない。というより飛ばない。
正確には、今は飛ばないと言った方が正しい。
齢60を過ぎた彼曰く、20年以上も前から230ヤード以上飛ばさないようにしていたそうだ。
普通の人と反対。
飛距離を喉から手が出るほど欲しがるのがゴルファーの性なのに、飛ばさないことを心情とした球筋は、初心者さながらの徹底した擦り球スライスである。
カシュッ!という擦れた音を残して左に飛んで行き、緩やかなバナナボールはフェアウェイをしっかりキープする。
セカンドは必ず同伴競技者より先に打ってプレッシャーをかける。
グリーンに乗らない時でも、ピンにビタビタ寄せてくるショートゲームの達人でもある彼は、「バーディーは要らない。」
パーを取り続けることでマッチプレイでもプレッシャーをかけまくったそうだ。
相手を自滅させる事を計算して、淡々と自分のスィングをすることで戦線練磨というご褒美を享受する。
その積み重ねが前人未到の快挙を成し遂げたのだ。
-なぜ飛ばさなかったのか?飛ばしたいと思わなかったのか?-
ゴルフを始めた若い頃、一緒にゴルフを始めた仲間と飛ばしっこをしたそうだ。
皆んな初心者で「スライサーズ」なんて冗談も飛び交うほど。
飛ばしとは何ぞや?そんな疑問すら持たずにひたすらマン振りのある日、ドローが飛ぶと言って仲間の一人がガンガン飛ばし始めたらしい。
こんな球打てたら自分も飛ばせると思ってからというもの、練習場に入り浸りで飛ばしを追求してた時期もあった。
そうこうしているうちに、ふと我に返るとスコアがボロボロ。
打ち方変えたもんだから、逆球のオンパレードでつまらないラウンドにフラストレーションの塊のようになってしまったという。
何とかして元に戻すにはどうすれば良いか?
分からなくなって、元に戻しスライスを打つ練習を始めた。
それでも、スライスをコンスタントに打つことは出来なかったらしい。
一度、体が覚えてしまった中途半端なドロースタイルは、そうそう元に戻せるほど簡単では無い事を実感したそうだ。
自分の持ち球は何?飛ばすの?それとも狙うの?
クラブを持つ度にそんな葛藤した時期もあったそうだ。
-やめて上手くなるゴルフもある!-
自分を見失った小ババ・ワトソンは、クラブを握る気力も無い程憔悴しきってしまった。
「暫くゴルフ止めるか!」
休む事半年。久々打ってみたくなって練習場へ足を運んだ。本能のおもむくまま何も考えずに打ってみると待望の擦り球が。
飛ばしに執念を燃やす他人を尻目に、この日から230ヤードきっちりの擦り球に磨きをかけ始めたそうだ。
元々擦り球のスライサーだからボールは捕まらない。重心距離の短いヘッドに、手元から中間にかけてしなる、捕まり過ぎないシャフトで新しいドライバーを組んだ。(写真は捕まらないシャフト、ツアーAD DI6S)
今までの捕まり過ぎる左を警戒して、中元調子でしなりを感じるカット軌道専用ドライバーが彼の新しい相棒。信じれるクラブになるかどうかは自分の本能と対話してもらうしか無い。(
写真は、捕まり系ヘッドプロギアチューン02と捕まりを抑えたシャフト ツアーAD DI6S)
功を奏し、このドライバーのおかげで繊細なコントロールがし易くなった。そして、ひたすら簡単にボールを叩けて、一番力を伝えやすいスィングを身につけたそうだ。
更に、彼が磨きをかけたのがアプローチとパット。(
写真はピレッティーGSS)
グリーンを外しても必ずワンピン以内に付けるアプローチと、真っ直ぐに打つための、飛ばさないアプローチ御用達スィング、距離感を身に付けるためのラウンドと自宅でもボールを転がしていたと言う。
かれこれ30年以上使っている、名器ピン・アンサースコッツデールは、一昨年のUSツアープロが優勝した際にも使用していた伝説のパター。
最近では、昔の糸巻きボールからソフトコアのボールに変り、このパターを使用しているプロも居なくなったのだが、軽いヘッドに鉛をびっしり貼って今でも使い続けている。
その理由は、道具が距離感を教えてくれるからだそう。彼曰く、「パターをコロコロ変える人にゴルフの上手い人はいない!」というのが持論だそうだ。
-微妙な曲げ具合を磨く!-
そもそも、ドローよりスライスの方がコントロールし易い。
致命傷にならないスライスを徹底的に追求する事で今のプレイスタイルが完成したそうだ。
元々本能的なスィングのため、細かい体の動き、体調やコンデションも打っていてスグに把握出来たそうだ。
ラウンド前に数発打って、曲がりの大きい日はそれなりのボールコントロールで。
コレだけ振ればコレだけ曲がるだろう・・・思考と体がマッチしているから誤差が少ない。
ラウンド前の練習場では、ドライバーと各番手毎の曲がり幅を把握するだけで充分だったという。
ラウンド中は、微妙なフェースの開閉にこだわって、スパットを決めアドレス時のフェースの向きを合わせる。
スィングプレーンを意識せず、体が要求するがままのスィングをする事でコントロールされたボールが飛んでいく。
ドライバーでもアイアンでも、いつもスイングプレーンは一緒。
本能が赴くままに打つからスィングにブレが少ないし精度が上がる。
他人は他人。自分は自分。杉原輝男プロが良いお手本だったそうだ。
-スィングが恥ずかしい?
多かれ少なかれ皆綺麗じゃないんだよ!-
「アマチュアでカッコ良くて綺麗なスィングをしているヤツなんて殆ど見たことがない。」
「自分のスィングビデオで見てごらん?全然プロみたいじゃないから。そんなの治そうと思っても時間が掛かるだけでスィングを壊す原因にしかならないんだよね!」
自戒の念を込めて、誰だって「無くて七癖」。キレイなスィングは体育会系アスリートに任せて、恥ずかしいスィングの完成度を高めていくのである。
「決して人より飛ばそうとしない。」
「230ヤード以上飛ばしたらスコアを崩す。」
「飛ばないから少々曲がっても致命傷にならない。」
肝に命じたのはそれだけだったらしい。その安心感は当然スコアに反映される。
「年を取って飛ばなくなるよりは、年を取っても同じ飛距離。」
これなら長いゴルフ人生、アドバンテージはこっちにある。なんて言ったって経験値が違うのだから。
40歳を過ぎた時、クラチャンを獲った。そして三年連続で連覇した。
並居る飛ばし屋やアスリートが喉から手が出るほど欲しがっているクラチャン。
クラブで一番上手いゴルファーが誕生していた。誰も自分のスィングを笑えない頂に立ったのである。
同じクラブのメンバーからは、嘲りのような視線が尊敬の眼差しに変わっていたのだろう。
今では、スィングを真似する人までいるらしい。
日々張り切っています。
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